皆さんは「地域猫活動」とはご存知でしょうか?
地域猫活動とはその地域に住みつく猫を地域住民がルールに則り世話をすることで、様々な野良猫被害を防ぐための活動を言います。
今回はそんな地域猫活動の実態などについて紹介していきます。
目次
地域猫活動の目的とは
そもそも地域猫活動の目的とはどういったものなのでしょうか?
- 飼い主のいない野良猫の数の減少
- 野良猫の引き起こす問題(糞尿被害や騒音問題)の減少
- 野良猫の愛護活動
野良猫がいることによって起こる問題を少なくするために、「殺処分」以外の「野良猫数削減」を図るのが地域猫活動の目的になります。
また愛護精神から、地域に生息する猫に対しての給餌活動なども行われます。
それでは具体的にどういった活動が行われるかを続いて紹介していきます。
地域猫活動で行われること
上記で紹介した地域猫の目的を達成するために行われる活動は主に以下の4点になります。
- 野良猫の去勢・避妊手術
- 定時定点での餌やり
- 野良猫用トイレの設置
- 里親探し
まず野良猫の去勢・避妊手術が、地域猫活動をするうえで最も重要な取り組みです。
手術を施すことで、マーキング行為や猫同士の喧嘩も少なくなります。
また地域猫活動の最終的な目的は「飼い主のいない野良猫」の数をなくすことです。
そして猫自体の数を減らす手段は殺処分以外では、去勢・避妊手術のみとなります。
去勢・避妊手術が済んだ猫に対しては、下の画像のように「桜耳」にしています。
左耳の先っぽが、サクラの花びらのようにカットされているのが見えると思います。
これによって去勢・避妊手術済みということがわかります。
地域猫活動では愛護精神から、地域猫への餌やりも行っています。
また野良猫被害の中でも最も多い糞尿問題を少なくするために、野良猫用トイレの設置や片づけなども行います。
里親探しは野良猫を飼ってくれる人を探すための活動です。
具体的には地域猫の里親募集会などを開催することがあります。
以上が主な地域猫活動の内容になりますが、実際のところ現状はどうなっているのでしょうか?
地域猫活動の現状【反対意見・失敗例など】
結論から言うと、地域猫活動は上手くいかないこともあるようです。
上手くいかないことの理由や原因は主に以下になります。
- 猫の繁殖ペースの早さ
- 全ての野良猫に対して去勢・避妊手術ができない
- 餌やりによる害の方が大きくなってしまっている
こういったところでしょうか。
猫の繁殖についてまず紹介していきます。
雌猫(メス猫)は多い子だと1年に3回ほど妊娠をすることができます。
そして1回の出産で2~6匹の子供ができます。
もちろんすべての猫が元気に育つわけではないでしょうが、それでも1年だけでもかなりのペースで猫が増えるのが分かると思います。
こういった繁殖を防ぐために大切なのが、去勢・避妊手術です。
ただ去勢・避妊手術は1匹の猫に対して1万~2万円ほどかかる高額な手術です。
地域猫活動ボランティアさんの自腹だけでは、とても全ての猫に手術をするのは難しいのです。
そして手術をできず取りこぼした猫や、新たにその地域に住みついた猫、捨て猫などがいることで野良猫の数が結果的に増えてしまうことがあるのです。
こうなると地域猫活動のメリットよりも、結果的に野良猫が増えてしまうなどのデメリットの方が大きくなってしまうというケースもあるようです。
成功例から学ぶ地域猫活動
1つの成功例として、信州コムキャットの例が挙げられます。
あくまで平成14~18年のデータであり、その後については詳しく分かりませんが、報告書を読む限りでは成功と言って差し支えないものとなっています。(信州コムキャット報告書)
ここで大切なのは、「何が信州コムキャットの活動を成功に導いたか」ということです。
報告書を読む限りでは以下の5点が大切なのだと考えられます。
- 去勢・避妊手術の高い実施率
- 定時定点給餌
- 猫の譲渡
- 行政(県)と地域猫活動団体の協力
- 捨て猫への意識変化
ひとつずつ詳しく紹介していきます。
1.去勢・避妊手術の高い実施率
まず明確に言及しておきたいのが、去勢・避妊手術の実施率です。
あがたの森公園では4年間の活動の中、68頭の野良猫が確認できました。
その内去勢・避妊手術を実施したのは59頭です。
パーセントで表すと確認頭数の86%は手術を実施したということです。
これはかなり高いのでないかなと個人的には思いました。
猫は一回の繁殖でも2~6頭ほど増えてしまうため、やはり去勢・避妊手術をしっかり行うことが地域猫活動成功の一番の秘訣だと考えられます。
2.定時定点給餌
続いて定時定点給餌についてです。
決められた場所、決められた時間に餌を与えることで猫は餌を貰えることを学習します。
ただ給餌をするのではなく定時定点によって、餌を与えることに意味があります。
定時定点給餌のメリットは2つあります。
- 野良猫の捕獲が容易になる(去勢・避妊手術につなげられる)
- 猫が餌をやる人をハッキリ認識し、温厚的な態度になる
去勢・避妊手術は当然のことながら猫を捕獲しなくてはできません。
定時定点給餌を行うことによって、猫の警戒心なども薄れてくるため捕獲が容易になります。
また猫が餌をくれる人をハッキリ認識することで、人に対して温厚になってくるようです。
そして温厚な猫は里親の貰い手が見つかりやすくなります。
3.猫の譲渡
定時定点給餌からつながっていますが、決められた時間・決められた場所での餌やりによって野良猫もだんだん人に懐いてきたそうです。
そして懐きの良さから猫の譲渡数も増えたと報告されています。
当然猫の引き取り数が増加すれば、野良猫の生息数は減少していくことになります。
4.行政(県)と地域猫活動団体の協力
行政(県)がボランティア(地域猫活動団体)を認めることで、ちょっとしたトラブルの回避につながったようです。
地域猫活動ボランティアさんによると、地域猫活動をしていると、好意的な意見8割・否定的な意見2割をもらうことがあるようです。
信州コムキャットでは地域猫活動は「行政とボランティア」が一体になって行われていました。
こういった県のお墨付きを得ていることで、ちょっとしたトラブルなどは防ぐことができるのです。
5.捨て猫への意識変化
最後に大切なのが、捨て猫をすることに対しての意識変化です。
どんなに地域猫活動がしっかり行われていても、捨て猫の数が多ければ結局野良猫の数というのは増えてしまいます。
ただ捨て猫問題に対する意識が高まることで、捨て猫の遺棄というのは少なくなったようです。
これも行政とボランティアが連携をしたことによって、少しは抑止力が増加したのではないでしょうか。
以上のようにしっかりと活動をすることで、地域猫活動が成功した報告例というのもあります。
個人的に考える野良猫問題の解消法
以下は私が個人的に考える、野良猫問題の解消法の提案です。
的外れな意見かもしれませんが、何かしらのアイデアの一助になれば幸いです。
かなりわかりにくくなるため、先に結論から書かせていただきます。
- 捨て猫に対する罰則の導入(飼い猫の登録制)
- 地域猫活動反対派・賛成派・中間派の意見交換(妥協点を探ること)
上記2点を行えれば、かなり野良猫トラブルは減少すると考えています。
1つずつ解説していきます。
1.捨て猫に対する罰則の導入(飼い猫の登録制)
まず最も大切なのは捨て猫をなくすことだと思っています。
地域猫活動をしっかりしたところで、捨て猫の数が多いと野良猫の数は一向に減りません。
具体的には飼い猫へのマイクロチップ埋め込みなど、何かしら猫を飼うこと自体を登録制にするのが必要だと思われます。
現状では動物遺棄に対しての罰則はありますが、ほとんど機能はしていません。
いくら遺棄をしても、その猫と元飼い主のつながりを示すことになるデータがないため罰則にはほとんどつながらないのです。
こうなると罪の意識も薄くなりがちです。
捨て猫(動物遺棄)を取り締まる方法の導入をすることが大切なのではないでしょうか?
2.地域猫活動反対派・賛成派・中間派の意見交換(妥協点を探ること)
続いて地域猫活動反対派・賛成派・中間派の意見交換が大切だと考えています。
地域猫活動について記事を書く中で、様々な意見を読みました。
その中で反対派・賛成派ともに、かなり極端な意見を持っているのだなと思いました。
確かに反対派や猫嫌いの人にとっては、野良猫の糞尿被害・騒音問題はかなりキツイですよね。
私自身も実家周辺は野良猫がかなり多く、自宅庭への糞尿被害も多かったため臭いの強烈さなどは理解しています。
しかし、だからと言って「猫が邪魔だ。じゃあ殺せ。」
というのはあまりに人間の勝手なのではないのかなと思うのです。
一方で地域猫活動への賛成派というよりも「ただ餌をやっている人」。
これはこれで、かなり太刀が悪いと思っています。
事実餌を与えるだけ与えて、糞尿などの問題には目を向けない人もいると思います。
これでは野良猫被害に悩んでいる人が怒るのも当然ですよね。
そこで大切なのが「中間派の人を交えての話し合い」です。
猫に対して好意的でも、否定的でもない人を交えて話し合いを行うことで「今後どうしていくのか、どうすることで双方妥協できるのか」というポイントを見つけることができると思うのです。
もちろんすぐにどうこうできるということはほとんどないと思いますが、野良猫トラブルを少なくしていくのには双方が意見を出し合う場を作ることが大切なのだと思います。
野良猫トラブルは糞尿被害ももちろんですが、野良猫を介しての人間関係トラブルとなってしまうことが多々あるようです。
そういったことを防ぐためにも、話し合いの場を設けるのは大切だと思うのです。
また最後にどうしても野良猫の糞尿被害が嫌だという人。
自宅庭への糞尿対策についてはこちらから確認できます。
まとめ
地域猫活動は正直まだまだ問題が山積みなようです。
ただ現状の問題がどんなもので、何をすれば解決していくのかを考えることが何より大切なのではないかなと思います。
photo credit:uka0310 by 野良猫、koutalou by DSC_0031