野良猫として保護されるケースの多くは子猫が占めています。
生まれて間もない子猫は、自分からご飯を手に入れることができず、体温の維持もできないため、子猫が一匹で生きていくことはできません。
猫と暮らしている方あるいは経験がある方でも、月齢(あるいは週齢)によって異なる子猫の育て方まで熟知しているのはごく少数でしょう。
ここでは、子猫を保護した時のために、その子猫の月齢(週齢)の見極め方と体の成長に適した育て方を確認しておきましょう。
子猫の月齢・週齢ごとの特徴
子猫は、ご飯の選び方や与え方、おしっこやうんちといった排泄のお世話など、成長段階によって異なることが多くあります。
そこで、保護した子猫が生まれてからどのくらい経っているのか見極める必要が生じます。
まずは子猫の月齢・週齢を見極めるため、それぞれの成長段階における特徴を知っておきましょう。
0週齢(生後1週間以内)
- 体重の目安:100g前後~200g
子猫は大体100gの体重で生まれてきます。
その後、順調に栄養を摂取できると、1日約10gずつ体重が増えていきます。
毎日記録をとって成長を確認しましょう。
この頃の子猫は、まだ目や耳の穴が開いていないため、音や光に反応しないものと考えてください。
また、生まれてすぐの子猫にはまだへその緒が付いています。
へその緒は、生後3日目を前後に自然と外れますので、子猫の首や手足に絡まっていない場合はそのままにしておきましょう。
1週齢(生後7~13日)
- 体重の目安:200g~300g
生まれてから1週間経過すると、目や耳の穴が開きます。しかし、この時点ではまだ視力は十分ではありません。
子猫によっては、だんだんと動き回るようになるため、周囲にぶつかってもケガをしないよう注意が必要です。
この頃はまだ体温調整が難しいため、室温を調整して、寝床には湯たんぽや毛布などで身体が冷えないように注意してください。
2週齢(生後14~20日)
- 体重の目安:300g~400g
生後2週間が経つと、視覚・聴覚が機能し始めるため、ものを目で追ったり音に反応したりするようになります。
また、後ろ足にも力が入るようになり、より活発に動き回れるようになってきます。
早い子猫では、この頃から口の中に乳歯の先端が見え始めます。
3週齢(生後21~27日)
- 体重の目安:400g~500g
3週間を過ぎる頃には、多くの子猫で乳歯が生えてきます。
さらに前足・後ろ足の使い方が上手になり、走り回れるようになるため、活動範囲がぐんっと広がります。
子猫自身でおしっこやうんちといった排泄、爪の出し入れができるようになるのもおおよそこの時期です。
1ヶ月齢(生後4~7週齢)
- 体重の目安:500g~1kg
生後30日前後になると、犬歯や臼歯と呼ばれる比較的大きな歯も含めてすべての乳歯が生え揃います。
また、乳歯で周りのものや人の手などをよく噛むようになります。
ほとんどの子猫が、この頃まではキトンブルーと呼ばれる青灰色をした瞳をしています。
2ヶ月齢(生後8~11週齢)
- 体重の目安:1kg~1.5kg
キトンブルーをしていた瞳が、その猫本来の瞳の色に変わる時期です。
オス猫であれば、この頃から睾丸(精巣)のふくらみがはっきりしてきます。
3~4ヶ月齢
・体重の目安:1.5kg~3.5kg
さらに体が大きくなり、成猫の体格に近づいてきます。
また、生後4ヶ月前後は乳歯から永久歯への生え変わりの時期でもあります。
そのため、この頃は乳歯と永久歯が並んで生えていることもよく見られます。
メス猫であれば、早い子ではこの頃から初めての発情を迎えることがあるため、食欲や様子の変化、鳴き声などに注意しておきましょう。
5~6ヶ月齢
- 体重の目安:3.5kg~4.5kg
この頃から、骨格の成長はゆっくりになり、主に筋肉と脂肪が付くことで体重が増えていきます。
毛質も子猫特有のベビーコートから成猫の被毛に変わります。
また、この頃にはほとんどの乳歯は抜け落ち、永久歯が生え揃います。
この際、抜け落ちた乳歯を子猫が食べてしまうことがありますが、多くの場合に支障はありませんのでご安心を。
子猫の成長に合わせたご飯の準備と与え方
ここまで、子猫の成長段階ごとの特徴を紹介してきました。
それぞれの特徴を参考にすると、実際に保護した子猫がどのくらいの月齢・週齢にあたるのか、判断することができたのではないでしょうか?
子猫は、成長段階によって食べられるもの・食べられる量が大きく変わります。月齢・週齢が分かったらまずはご飯の準備をしていきましょう。
0~2週齢
この時期はすべての栄養をミルクから摂取させる必要があります。
ここで使用するミルクには、必ず子猫用粉ミルクを準備しましょう。
もし、夜中などで手に入らない場合は、一時的に牛乳を煮沸して与えても構いませんが、乳糖により子猫が下痢をしてしまう可能性があるため、継続して与えないよう心がけて下さい。
子猫用粉ミルクと一緒に哺乳瓶も用意しましょう。
哺乳瓶の乳頭部分はゴムでできているものがほとんどですが、最初は穴が空いていないことが多いです。
ハサミで切り込みを入れる際にはちょっとずつ穴を空けましょう。穴が大きすぎると一度にミルクが出過ぎてしまって、子猫が誤嚥する恐れがあります。
★粉ミルクの与え方
粉ミルクは50℃ほどのお湯で溶かします。しかし、与えるときにはミルクの温度が39℃前後に冷ましてあげます。
与える直前に自分の手に垂らして熱すぎないかどうか、確認してから与えましょう。
またミルクの与え方にもポイントがあります。
体の小さな子猫は一度に飲めるミルクの量が限れていますので、幼いほど少量ずつ頻回に分けてミルクを与えなくてはなりません。
授乳量と頻度の目安は以下の通りです。
0週齢
- 1日の授乳量:70mL
- 授乳の頻度:2~3時間おき
1週齢
- 1日の授乳量:90mL
- 授乳の頻度:3~4時間おき
2週齢
- 1日の授乳量:120mL
- 授乳の頻度:4~5時間おき
これらはあくまで目安ですので、日に日に体重が増えているようであればこの授乳量を厳密に守る必要はありません。
ただし、哺乳瓶からうまくミルクを飲めない子猫の場合には、スポイトや動物病院でシリンジを手に入れておくと便利です。
3~4週齢
乳歯が生え始める3週齢に入ると、離乳食を始めることができます。
しかし、ここでのポイントはいきなりミルクをやめないこと。
これまでミルクだけで栄養を摂取してきた子猫の胃腸は、突然固形物が入ってくるとびっくりしてしまいます。
ミルクを与えつつ、少しずつ離乳食の割合を増やしていきましょう。
離乳食としては、市販されている子猫用のペースト状のものがオススメ。
与える前に電子レンジで人肌程度に温めておきましょう。
そうすることでにおいが強くなり、子猫が興味をもちやすくなります。
初めて与えるときには、子猫の鼻に付けて舐めさせたり、口を開けて上あごに付けるようにして食べさせましょう。
子猫が離乳食に慣れてきたら1回分のご飯をお皿に盛って与えます。
また、ペースト状の離乳食が苦手な場合は、子猫用のドライフードをミルクやお湯で十分にふやかしてから与えてみるのも1つです。
5~6週齢以降
この頃になると、通常ミルクは必要なく、与えるのはドライフードだけでも構いません。
ただし、ドライフードのみだと水分の摂取量が不足してしまう恐れがあるため、飲み水はいつでも飲めるように用意しておきましょう。
ドライフードの選び方にも2点注意があります。
1.「総合栄養食」と表記されているものを選ぶ
まず1つ目は、必ず総合栄養食と表記されているキャットフードを選びましょう。
総合栄養食とは、そのご飯とお水を与えるだけで猫が生きていく上で必要な栄養素を全て満たすことができるものを指します。
したがって、主食となり得るのはこの総合栄養食のみと言えます。
中にはウェットフードであっても総合栄養食と表記されているものがありますので、ドライフードが苦手な子猫には探してみましょう。
一方で、総合栄養食という表記がないものや、「副食」「一般食」「おやつ」などと表記されているものを主食としてあげ続けてはいけません。
これらはどれも必要な栄養素すべてを満たすことができないため、栄養バランスが偏ってしまいます。
2.「子猫用」を選ぶ
また、子猫が成長に必要な栄養素と、成猫が普段必要とする栄養素は、その割合が大きく異なります。
そのため、成猫用のキャットフードでは子猫の成長を十分に支えることができませんので、注意が必要です。
さらに、子猫用と表記されているドライフードは、一般的に小粒に作られています。
子猫が食べやすいように配慮されていますので、ぜひこちらを用意しましょう。
保護した子猫の成長段階が分からない場合には、口の中を覗いてみましょう。
上唇をあげて歯が確認できたなら、すでに乳歯が生えており3~4週齢を過ぎている証拠。
離乳食やドライフードをふやかしたものを与えてみましょう。
一方で、まだ歯が生えていない場合には多くの場合にミルクが必要です。
できるだけ早く子猫用の粉ミルクと哺乳瓶を用意しましょう。
授乳がうまくできない場合は、子猫が低血糖に陥ってしまう可能性があるため、動物病院への受診を検討して下さい。
排泄のお世話とトイレの用意
子猫が自力で排泄できるようになるまで、おしっこやうんちといった排泄のお世話もしなければなりません。
本来、母猫がおしりを舐めて子猫の排泄を促すのですが、母猫が近くにいない場合にはその代わりをする必要があります。
0~2週齢
まだこの時期の子猫は、ほとんど自分で排泄ができません。
母猫がおしりを舐めて刺激する代わりに、清潔なティッシュやコットンなどをぬるま湯で湿らせて、トントンと軽く叩いて刺激します。
この際、刺激する場所は肛門および尿道口になりますが、場所が分からない場合には動物病院で獣医師に教わっておきましょう。
排泄のタイミングとしては、授乳をする前と終わった後にお世話しましょう。
子猫もおしっこやうんちをがまんした状態では食欲がありません。
幼い子猫では、3~4時間に1回はおしっこを出させるよう促しましょう。
成長するにつれて、がまんができるようになるので、排泄の間隔を徐々に延ばしていくことができます。
一方で、ミルクが主食のこの時期、うんちは毎日は出ません。
それでも3日以上うんちが出ない場合は便秘の可能性があるため、動物病院へ相談しましょう。
3週齢以降
離乳食を始める時期になると、子猫は自力で排泄できるようになってきます。
そのため、トイレを準備する必要があります。
まず最初のトイレは、子猫がまたぎやすいようにフチが低いものがオススメ。
トイレには細かい猫砂を下に敷いておきます。
子猫は異物の誤飲が多いため、猫砂などを食べたりしないかよく注意する必要があります。
そもそも猫は本能的に砂の上で排泄をする動物なので、猫砂を踏んで自然と排泄できる子猫も多いと言えます。
もし、トイレに入ってもまだ自力で排泄できない場合には、おしりを刺激して排泄を促してみましょう。
おしっこをしたらできるだけ猫砂に吸収させて下さい。
そうすることでにおいがトイレに付き、子猫がトイレを覚えやすくなります。
また、子猫の成長は早く、せっかく用意した小さなトイレも1~2週間で使えなくなることも。
適当なサイズの紙箱や段ボール箱でも代用できますので、その場合はペットシーツを入れて猫砂を敷きましょう。
猫砂が手元にない場合には、準備できるまで新聞紙を細かくちぎって敷く方法もあります。
離乳期を過ぎているかどうか確認しましょう。
もし乳歯が生えていない場合にはまだ数時間ごとに排泄のお世話が必要なことが多いです。
中にはすでに自力で排泄できる子猫もいるため、2~3時間おしっこやうんちが出せるかどうか様子を見てから判断して下さい。
保護したらできるだけ早く動物病院にかかろう
子猫の元気がない、何かおかしいと感じる場合はもちろんですが、保護してからなるべく早く1度動物病院で獣医師の診察を受けましょう。
子猫の年齢推定や健康状態を見てもらい、食事についても相談しておきましょう。
また、多頭飼いをしている方は特に、他の猫ちゃんのためにもノミ・ダニ駆除や感染症の有無を確認してもらうことも大切です。
保護主さんからでは分からなかった生まれつきの異常や病気が見つかることも少なくありません。
注意すべき子猫の病気や感染症
早い段階での動物病院の診察をオススメする理由の1つが病気や感染症を早期発見するためです。
その中でも特に注意したいものを挙げます。
- 外傷(ケガ)
- 骨折、脱臼などの骨や関節の異常
- ノミやダニなど体表に付着する寄生虫
- 消化管内寄生虫
- 猫風邪(多くがウイルス性)
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫エイズウイルス感染症 など
これらに関しては、「野良猫を保護して飼い始めたら最初にする7つのこと」でも紹介していますので、ぜひご参照下さい。
本当に野良猫かどうか確認してもらう
また、保護した子猫が本当に野良猫かどうかも近くの動物病院で確認しておきましょう。
動物病院でできることとして、マイクロチップの確認が挙げられます。ぜひチェックしてもらってください。
子猫のケースではあまり多くはありませんが、飼い主から迷い猫の広告が出されていることがあります。
お住いの地域で似た子猫の情報が無いか、自身で調べると同時に動物病院に尋ねてみるのも良いでしょう。
動物病院での診療費の目安
子猫を保護して動物病院に連れて行った場合、診察や最低限のチェックや処置でも3,000~4,000円ほど、合わせて検査や予防接種、駆虫などを実施するなら10,000円ほど診療費が発生します。
これらに関しても、「野良猫を保護して飼い始めたら最初にする7つのこと」でも紹介していますので、ぜひご参照下さい。
まとめ
今回は、保護した子猫の月齢・週齢の判断から、成長段階に合わせたお世話の方法について具体的に解説させて頂きました。
この記事が子猫との生活をスタートするみなさんの助けになると幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
動物病院の探し方にお困りの方はこちらの記事も参考にしてみてください。
参考文献
- 「野良猫の拾い方」 大泉書店 (2018/4/24) 東京キャットガーディアン (監修),
子猫の頃は、成長するためにエネルギーを必要とする一方でまだまだ体が強くはありません。
さらに成長段階によって食べられるご飯が異なり、排泄や給餌のお世話も多く必要となります。
そのため、子猫のお世話に慣れていない方は1度動物病院で相談してみましょう。
獣医師や動物看護師から直接お世話のコツを教えてもらえることと思います。