猫の殺処分数が少ない都道府県は?殺処分ゼロのために今すぐできることも紹介

みなさんは、年間でどれくらいの猫が殺処分になっているかご存知ですか?
環境省のデータによると、令和2年度は1万9,705頭もの猫が全国で殺処分されています。

ただ年々、ペットの環境改善に対する意識は全国的に高まっており、行政が引き取る猫の数や猫の殺処分数は減少傾向にあります。

ねこわら君

現在でも多くの猫が殺処分されている自治体も多くあり、殺処分の多い・少ないというのは差が大きいのが現実ですが、今回は猫の殺処分が少ない3県とその取り組みについてご紹介します。

ねこわらは、不幸な運命を辿る猫が少しでも減ることを切に願っています。

本記事が、「猫の殺処分を減らすために自分には何ができるのか?」を今一度考えるきっかけになれば嬉しく思います。

猫の殺処分が少ない県1.神奈川県

全国的に猫の殺処分をゼロにするのは大変なことだという認識が広まっている中で、快挙を達成した県が存在します。

それが神奈川県です。 2021年4月時点での情報ですが、令和2年度、神奈川県動物愛護センターに保護された猫の殺処分ゼロを見事に達成しています。

平成26年度から7年間、殺処分ゼロがずっと続いているというから本当に驚きです。

なぜ神奈川県が猫の殺処分ゼロを達成できたのか…気になりますよね。

殺処分ゼロの先を見据えた神奈川県の活動をご紹介します!

川崎市動物愛護センターではもともとは年間2,000頭以上の猫や犬が殺処分されていたのですが、このことに強い危機感を持った職員たちが以下の4つの方法を実践しました。

1.保護センターの収容数を減らす

保護センターでは、正当な理由がない場合には動物を引き取るかどうか選択できるようになっています。

川崎市の動物保護センターは飼い主の勝手な都合での受け取りを制限しました。つまり、収容頭数を半減させることに成功したわけです。

これまで多くの飼い主が、「猫が増えすぎた」、「世話できなくなった」などの身勝手な理由で保護センターに猫を持ち込んでいたそうです。 受け取りを制限した結果、殺処分する猫の数を大幅に制限できました。

2.TNR活動

TNRって何のこと?と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

ねこわら君

TNRとは、

・Trap(トラップ):捕獲器で猫を保護する

・Neuter(ニューター):去勢・避妊手術をする

・Return/Release(リターン):元の生活場所へ戻す

上記三つの頭文字をとった言葉です。

つまりTNRは外で生活する猫の繁殖を防止するための活動のことをいいます。

親猫の飼育放棄などで自力で生きることができない子猫のほとんどを保護センターで引き取っており、年々子猫の収容数が増え続けていました。

しかし現在ではTNR活動をおこなうことによって、野良猫の繁殖数が少しずつ減少しており、センターへ来る子猫の数も減少傾向にあると言います。

3.譲渡活動

保護されている猫を譲渡する機会が広がったことも、殺処分ゼロ達成に大きく貢献しています。

とにかく猫の譲渡に力を入れており、譲渡をいかに効率よくおこなえるかということに重きを置いた活動をしています。動物愛護センターに保護された猫の命を大切に守るためにも、殺処分だけでなく譲渡につなげる取り組みをおこなっているのです。

色々なボランティア団体が保護センターに登録しており、川崎市動物愛護センターに持ち込まれた猫を飼育しながら、新しい飼い主を探してくれるボランティアからの譲渡も増加中です。

殺処分されていた命が、ボランティアの手助けによって救うことができているのです。

「神奈川県動物保護センター建設基金」として、一般向けにも資金を募っています。

4.神奈川県獣医師会と連携

川崎愛護センターでは、職員の半数以上が獣医師の資格を持っています。

取り組みの一つとして、「かながわペットのいのち基金」を活用しており、(公社)神奈川県獣医師会と連携しています。

怪我・病気の猫の治療のほか、人馴れしていない猫をできるだけ人に馴れさせ、譲渡会や譲渡前講習会のオンライン化のほか、動物愛護センターのホームページを譲渡に特化したページへリニューアルしています。

かながわペットのいのち基金のリーフレットはこちらをご覧ください。

5.啓蒙活動

保護センターでは、保護された猫の精神的ケア・肉体的ケア以外に、啓蒙活動にも力を入れています。

大切な命を最後まで責任をもって飼い続けてもらえるよう「飼養前講習会」を開催し、その講習を受けた方のみ譲渡会へ参加することができるなど、啓蒙活動を通して動物愛護精神を高める活動をおこなっています。

神奈川県川崎市の公認動物ボランティア「かわさき犬猫愛護ボランティア川崎区委員会」の活動内容をご紹介します!

猫の殺処分が少ない県2.奈良県

神奈川県に続き、猫の年間殺処分ゼロを達成した県が他にもあります。 それが奈良県です。

奈良県奈良市では平成20年度には600件以上あった殺処分が、平成27年度には40件台に減少し、令和元年度に初めて殺処分ゼロを達成しています。令和2年度・3年度もゼロとなっています。

合計
(犬・猫)
平成20年度平成21年度平成22年度平成23年度平成24年度平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度令和 2 年度令和 3 年度
収容捕獲87566158497631491412141176
引取688564453410325322288294160159173158158138
負傷救護5175326179774224192540482936
小計826695546529453475361367193196227217194180
処分返還5943585057679246211727201022
譲渡4435412188256109141164173136
自然死・安楽死102168105671121491141961165454361220
殺処分66345938040028021816943831000
小計828674546522453446393367201183223220195178

参照:【市長会見】犬猫殺処分ゼロを3年連続で達成しました(令和4年4月12日発表)

なぜ殺処分数が減ったのか、その取り組みは下記の通りです。

1.引き取り数の減少

殺処分される不幸な猫を増やさないという目的のため、TNR活動を推進するために、奈良県では不妊手術などによる引き取り数の減少に努めています。

2018年に、飼い主のいない猫に対する不妊去勢手術費を補助する制度を開始しました。

2020年度には84頭分が不妊去勢手術の助成対象となり、2021年度からはさらに引き取り数を減少させるために、不妊去勢手術の活動(TNR)に取り組むボランティアに謝礼を支払うというシステムを構築しました。

2.子猫の飼育を充実させる

2018年から、保護された生後2か月未満の子猫や人馴れしていない猫を預かるミルクボランティア制度を開始しました。現在は20人以上が登録しているようです。 このボランティアでは、ミルクや給餌、排泄、人馴れさせるための世話をおこないます。

ボランティアの方には謝礼や医療費の補助をおこなうシステムとなっており、互いにメリットがあるという点ではとても画期的な取り組みだといえます。

3.譲渡活動

奈良県では、とにかく譲渡の推進に力をいれています。殺処分が大幅に減ったのも譲渡のおかげです。

2019年のデータですが、猫の譲渡数は年間150頭以上で、殺処分ゼロとなっています。これは快挙です。

奈良県がいかに猫の殺処分を減らすための努力を真剣におこなっているかが分かりますね。

奈良市ホームページでは、現在、里親募集中の猫たちの情報を見ることができます。

2015年に、保護猫の飼い主を探すためのボランティアに登録してもらう制度をスタートさせました。

2018年4月には猫を購入する人に対し、終生飼育することなどを誓約してもらい、さらにマイクロチップを装着して販売するパートナーシップ店の登録を開始。

現在は下記4店が認定されています。

  1. マルエスペットはんな店 Tel:0742-52-6124
    住所:奈良市菅原町19-7
  2. マルエスペット富雄店 Tel:0742-52-5088
    住所:奈良市石木町100-1
  3. マルエスペット押熊店 Tel:0742-41-8830
    住所:奈良市押熊町1451-1
  4. マルエスペット奈良店 Tel:0742-64-3445
    住所:奈良市西九条町3-6-14 ロイヤルホームセンターペット館内

パートナーシップ店は、趣旨に賛同してくれる店舗を募り、随時追加されていくようです。

また2021年には、ふるさと納税で「犬猫殺処分ZEROプロジェクト」の寄付を活用しました。ボランティアの負担軽減を図っています。

奈良県の動物保護団体「world love heart*(ワールドラブハート)」の活動内容をご紹介します!

猫の殺処分が少ない県3.岡山県

岡山県動物愛護センターも猫の殺処分が少ない県にランクインしています。

令和3年度の猫の殺処分頭数は55頭。引き取り数は10頭です。

この数字は全国的に見てもとても少ないです。

年度令和元年度令和 2 年度令和 3 年度
収容252309229
返還102
引き取り301510
殺処分396255

参照:統計資料

岡山県動物愛護センターで収容される猫の数は毎年減ってはいますが、そのうち元の飼い主・新しい飼い主に引き取られた猫の数はわずかなのだそうです。その他の猫たちは殺処分しか道はありません。

保護収容した猫は、捨てられた子猫や飼い主から「飼えない」と引き取りを求められた事例が多くあり、無計画な繁殖が大半です。

岡山県での殺処分を減らす取り組みとしては、主に下記となっています。

1.啓蒙活動

飼い主の「モラル向上」が最重要と考え、飼い主に対し、終生飼養や繁殖制限措置の実施のほか適正な猫の飼い方などの情報を広めています。

これから猫を飼おうと考えている方に対して、飼い主としての責務を十分理解・認識し、家族全員の同意の下で、家族全員が猫に愛情を持って最期の時までしっかりと世話をしてもらう、ということを重点に置いた啓蒙活動をおこなっています。

2.飼い主からの引き取りを減らす

岡山県は、全国的に見て返還・譲渡率がとても高いです。

これは2015年度の情報になりますが、返還・譲渡率1位は岡山県となっていて、返還・譲渡数は1467頭となり、返還・譲渡率は77.5%です。

飼い主に、終生飼養への理解を深めてもらうよう、根気よく話し合いをし、安易に引き取りをしないよう努めています。

終生飼養がどうしても難しい、という場合は、市民間での譲渡を推奨しており、山陽新聞の広告欄への掲載などが活用されているそうです。

3.ボランティア団体と連携

職員の、動物愛護や譲渡への意識が高まったことも相まって、動物愛護ボランティア団体との協力も密になっていきます。 そのおかげで、猫の譲渡活動がスムーズに進むようになったそうです。

岡山県で精力的に動物保護ボランティアの活動をおこなっているのは、NPO法人 しあわせの種たちです。

岡山県動物愛護センターの登録ボランティア団体で、殺処分対象となった犬猫の保護活動をしています。

また、岡山県動物愛護財団でも、岡山県動物愛護センターで保護された猫たちの譲渡を積極的におこなっていますので、ぜひご覧ください。

殺処分ゼロのために私たちが今すぐできること

全国で年間1万9,507頭もの猫が保健所で殺処分されているという現実。しかも、そのうち66.7%に当たる13,030頭が生まれたばかりの子猫です。

日々数え切れないほどの猫の命が消えているということに、深い悲しみ、ショックを感じます。

殺処分から猫を救うために、自分たちが今できることから始めましょう。

  • 動物を飼う前に、終生飼養について学び、その責任を知る
  • TNR活動について正しく知る
  • 自分の住んでいる地域のボランティア団体の活動を知る
  • ボランティア団体のSNSをフォローしたり投稿を拡散したりする
  • ボランティア団体に寄付したり物資を送ったりする
  • 保護猫カフェで保護猫と触れ合う
  • 譲渡会に行ってみる
  • 猫に関するセミナーや勉強会に参加する
  • ボランティア団体でTNR活動のお手伝いをする
  • 保護猫の預かりボランティアをする

など、あなたが今すぐできることは、こんなにたくさんあります。何か一つでも猫の殺処分が減るような行動をとれるようになればと思います。 

どんなに些細なことでもかまいません。猫の保護活動、猫の殺処分を減らすことに貢献してくれる人が増えていってくれるよう、願っています。

この記事を書いた人

a_murakami
小さな頃からとにかく動物が大好きで、小学生の頃には猫15匹と犬3匹に囲まれて暮らしていました。 現在は猫2匹と犬1匹と暮らしています。 猫と飼い主さんのためになる記事を書きたいと思っています。 新たな発見になるような、分かりやすく楽しい文章を心がけています。

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