室内飼いの猫は爪切りをしないと、巻き爪になってしまうことがあります。
巻き爪は酷い場合には、肉球に爪が食い込んでしまうこともあります。
実際歩きにくそうにしている猫を見たら、肉球に爪が刺さっていたなんてこともあるのです。
そこで今回は、猫の巻き爪の原因や、巻き爪の切り方、気になる病院代の相場について紹介しています。
猫の爪の構造
猫の爪の構造は、まさにハンター!!と言ったような合理的な構造をしています。
猫を飼っている皆さんなら、家の中に爪の皮が剥がれた様な破片が落ちているのを見たことはないでしょうか?
実は猫の爪は玉ねぎの皮の様な層構造をしており、常に内側から鋭い爪が作られています。
爪とぎをする事で、外殻が剥がれ落ち、常にシャープな状態がキープされます。
勘のいい人なら、「おや?じゃあ、猫の爪きりは必要ないんじゃ無いか?」
と思うかもしれません。現に野良猫や野生の猫科の動物は人が爪きりしてないのに問題なく生活できていますよね?
では、何故飼い猫で巻き爪を起こしてしまう子がいるのでしょうか?
猫が巻き爪になる原因
猫の巻き爪は「爪とぎが上手く出来なくなる」ことで起こります。
えっ?どういうこと?と思われるかもしれませんね。
この「上手く爪とぎができない」ことには色んな原因があります。
- 老化に伴い爪を研ぐ力が衰えた。
- 爪とぎが柔らかすぎて、外層が剥がれない。
- 爪や脚に変形を伴う疾患がある。
- 栄養不良で正常な爪が作れない。
猫の巻き爪は、何かしらの原因で上手く爪の外層が剥がせなくなることで起こります。
そのような、爪が何層ものバームクーヘンの様に太く分厚くなってしまう子においては、定期的に爪きりをしてあげなければ、いつか自分の肉球に刺さってしまうなんてことになりかねません。
動物病院の診療で巻き爪を起こしてくる子も比較的高齢の猫ちゃんがやはり多い印象です。
特に腎疾患を持っている猫ちゃんはその様な爪の変化が現れやすいため、健康診断を行ってあげるのもいいでしょう。
▼ 肉球に食い込む猫の巻き爪
見るだけでも痛々しいですよね(-_-;)
こういった状況になってしまうと、猫は普段通り歩くのでさえ痛みを伴ってしまいます。
多くの猫は爪切りを嫌がるため、爪切りが疎遠になってしまう飼い主さんも少なくないと思います。
ただ爪切りをしないでいると、巻き爪が肉球に食い込んでしまうこともあるため、そうなる前に爪切りは行うようにしましょう。
もし爪切りのやり方などがよく分からない場合は、下記の記事を参考にしてみてください。
爪切りの重要性
これまでの記事を読んで頂いた方ならこんなことを思うかも知れません。。。
「おや?つまり、若くて健康な猫ちゃんなら爪切りは必要ないのでは?」
これについては、あながち間違いではありません。
しかし、獣医師という立場から言えば、やはり定期的に爪切りを行うことをお勧めします。
それは、爪切りを定期的に行うことで、猫ちゃんの小さな変化に気が付けるため、また、人との共同生活を送る上でお互いが安全で健康に暮らしていくためでもあります。
特に、猫の引っ掻き傷から人に感染する猫ひっかき病は人医療の観点からも予防すべき重要な病気と言えます。
爪切りの頻度と心構え
『Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology 7th Edition』(獣医皮膚科専門書)にはこの様にあります。(和訳)
“猫は自らで爪の外層を脱落させ管理するが、犬の爪は良好な肢の健康状態や正常な運動機能のために適切な手入れを行い続けるべきである。”
“異常な爪は肢の外傷や挫傷、趾端皮膚炎の素因となる”
つまり、猫においては「基本はセルフケアにより管理できるはずだが、何かしらの問題により長く伸びすぎた爪は切る必要がある」と言えます。
そのため、「何ヶ月に1回は爪を切りましょう!」と言う基準は存在しません。
逆に言えば、「1ヶ月経ったから爪を切らなければ!!」と義務感に追われて、責務の様に爪を切る必要はありません。
もっと、気楽でいいのです。
爪切りを嫌がる猫ちゃんは非常に多いです。怒ってしまって家ではなかなか・・・と言う子も多いです。
一言アドバイスとしては『一度に全ての爪を切る必要がない』と気楽に取り組んでみてください。
無理に押さえつけて、一度に全ての爪を切ろうとすると、なかなか上手くいかず、猫ちゃんにも多くのストレスをかけてしまいます。
仕舞には爪切りを持っただけで隠れてしまう様になってしまうかもしれません。
今日は右前足、明日は左前足、、、という様に足ごとに日を分けても構いません。場合によっては爪1本ごとで区切っても良いでしょう。
極力、猫ちゃんにストレスをかける時間を少なく、お互いストレスフリーに行うことが何よりも大事なことです。
巻き爪への対処
巻き爪が肉球に食い込んでしまっている場合は、基本的には無理にご自身で行おうとせずに、病院に受診し、傷を確認してもらうことをお勧めします。
肉球に食い込むほどの巻き爪となると、受傷後からの時間も長く経っており、場合によっては膿んで壊死を起こしている場合などもあります。
また、処置に痛みを伴うこともあるため、いくら大人しい子であっても、ビックリして飼い主さんを咬んでしまうこともあります。
決して無理をせず、専門家に任せると言うのも一つの愛情の形です。
実際の巻き爪に対する処置動画がYoutubeに多数公開されています。
▼ 実際に、巻き爪の処置をしている動画(英語)
手順としてまとめると以下のようになります。
- 猫を保定する(目隠しマスク、洗濯ネット、2人で役割分担をするなど)
- 巻き爪周辺の汚れた毛などを取り除く
- 巻き爪の真ん中あたりを爪切り用ニッパーなどで切る
- 肉球に食い込んでいる爪を抜く
- 患部から血が出てくるため、猫用の消毒液をつけたコットンなどで消毒をする
猫の巻き爪の治療費は?
病院によって値段は違いますが、通常の爪切りはおよそ「500~1,000円」ほどが多いでしょう。
ただ巻き爪治療の場合は、病院にもよりますが、「2,000~4,000円」ほどで設定している病院さんも多い様です。
猫ちゃんの性格によっては、鎮静剤を用いないとまともに爪が切れないと言う様な場合もあるため、その様な場合は
さらに鎮静処置代などが加算されることもあります。
巻き爪は猫ちゃんにとっても痛いし、飼い主さんの財布にも打撃を与えるしと全く嬉しいことがないですね。
ここまでのことを考えても、巻き爪になる前に対処することが大切です。
まとめ
巻き爪を起こすと言うことは、何かしら巻き爪を起こしてしまう『問題』が存在しているのかも知れません。
老化に伴うものであれば、致し方ないところもありますが、見えない病気のサインとなっている事もあります。
日々の爪切りを行うことで、いち早く愛猫の変化に気がついてあげられるかも知れません。
また、長く鋭すぎる爪は人と暮らす上では、大きな弊害となることもあります。
こう言った、トラブルから愛する猫ちゃんと家族の関係が崩れてしまうのはなんとも悲しいことです。そうなる前に、日々愛情を持ってケアをしてあげたいものです。
実際に外傷を負ってしまっている子をご自宅でなんとかすると言うことはあまりお勧めできません。
巻き爪の処置でもそれなりに費用はかかるので、やはりペット保険は大事と言えます。
参考文献
Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology 7th Edition
獣医感染症カラーアトラス 第2版
photo credit:Jeffrey Beall by Cat getting his nails clipped.
ペット保険選びに大切な3つのポイントと、後悔しない保険の選び方を紹介しています。
保険料だけでなく補償内容や、サポートの品質を総合的に確認しながら、保険プランを選んでいくことが大切です。