【実話】猫とホームレス男性の美しく切ない物語

「事実は小説より奇なり」とはよく言いまわされる言葉ですが、そういったケースが実際に生み出されるのはまれです。
ただ、ノンフィクションのストーリーは事実だからこそ、時に深く胸を打つことがあります。
それは猫が関わる物語に関しても同様です。

以前、このサイトで『ボブという名の猫』について紹介しました。
薬物中毒者である一人のホームレス青年が、猫との出会いを通して成長していく物語です。
この素敵な物語もノンフィクションであるため、多くの人々の心を打ちました。

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そして、数年前、同様に1冊のノンフィクションストーリーが出版されました。
本の名は『Strays:迷子猫、ホームレス、そして彼らのアメリカ大陸横断旅』(翻訳版はありません。)

タイトルから分かるように、ホームレス男性と猫が登場するストーリーになっています。
このノンフィクション物語も、ボブという名の猫同様に、多くの人の心を惹きつけるものとなっています。
恐らく今後映画化もされるのではないでしょうか。

今回は、この『Strays』のストーリーを紹介していきます。

 

アメリカ大陸をヒッチハイク旅した猫とホームレス男性

▲マイケル・キングとテイバー

マイケル・キングは彼がわずか15歳の時に、家族の元を離れました。
彼は優しい里親の助けを借りて、彼自身のための人生を送るようになりました。
マイケルはある男性と恋に落ち、彼と一緒に引っ越し、数年間幸せな生活を送りました。

しかし、マイケルの恋人は病気によって亡くなってしまい、それをきっかけに、彼の過去の家族へのトラウマがよみがえりました。
そして、マイケルはミズーリ州セントルイスのシェフという職業を捨てて、ホームレスになりました。

ポートランドに到着し、そこで寝ている他のホームレスに混じり、酒と煙草を楽しみにする生活を送ったのです。

ある日マイケルと彼の友人は、食べ物を探して歩いていたところ、ピクニック用テーブルの下に一匹のぐったりとした猫がいるのを見つけました。
猫は怪我をしており、怖がっていましたが、マイケルはなんとか彼女(猫)をなだめました。

マイケルはその夜、猫の世話をしましたが、彼女が朝まで滞在するとは思っていませんでした。
しかし、彼が起きても、猫はまだそこにいました。
最初は猫を飼う気がなかったマイケルでしたが、猫が数日たっても彼の元に戻ってきたことから、愛情を抑えられなくなりました。

マイケルは猫と出会ったのが喫茶店「Tabor Hill Cafe」の目の前だったことから、猫を「テイバー」と名付けます。
そして、ここから二人の友情が始まったのです。

テイバーはマイケルの肩に腰掛けたり、彼のバッグの上に陣取って、彼とホームレスたちとの生活になじみました。
マイケルとテイバーのコンビは、地元のポートランドでは有名になりました。

テイバー(マタ)の元々の飼い主はその頃・・・

マイケルとテイバーの絆が深まっていた一方で、テイバーの本来の持ち主は彼女がいなくなったことに対して、深い悲しみを抱いていました。
本来の飼い主であるロン・バスは、テイバーのことを「Mata Hairi(通称:マタ)」と呼んでおり、マタはロンにとって最愛の猫でした。

ロンは、マタがまだ小さい時、彼女と彼女の弟猫を彼の家に連れて帰りました。
共に幸せな生活を送っていましたが、2012年のある日、マタが家に帰って来なくなりました。
ロンは彼女を見つけるために、猫の精神科医に相談し、いつも彼女を探していました。

マタの弟猫であるクレトも悲しみ、いつもポーチでマタが戻るのを待っていました。
その時、ロンはある一つの最悪な事態を恐れていました。
彼の隣人であるジャック(筋肉質の元レスラー)を疑ったのです。

本の著者であるコリンズは次のように言います。
「同性愛者であり、太りすぎ、かつ猫愛好家であるロンを苦しめるのが彼にとっては喜びだったのです。」

しかし実際には、マタが単純に家から少し離れすぎて放浪していたのが原因でした。
そして、そんな中マタ(テイバー)はマイケルと出会ったのです。

やがてキングはテイバーの幸福を考えるようになり、彼女のために安全を確保します。
また、誰かが「マイケルは酒の飲み過ぎで猫を飼うことができない」と主張するのを防ぐために、飲酒を控えるようになりました。

1匹と1人のアメリカヒッチハイク旅行

マイケルはポートランドの季節が変わり始めたとき、より暖かい気候であるカリフォルニアへのヒッチハイク旅行を計画しました。
マイケルと一緒にヒッチハイク旅をするマタは、2歳の元家猫としては、前例のない冒険を送ることになりました。

彼らはカリフォルニア州オレゴン、アイダホ州の高原、モンタナなどを旅しました。
道中、二人は様々な目に遭いました。

ある時、テイバーが臨戦態勢になったと思ったら、ヒグマが近くにいました。
テイバーはうなり、威嚇し、ヒグマを怖がらせようとします。
当然、マイケルはテイバーをバックにいれて、マイケルの友達の車へ即座に逃げ込みました。
車の中から熊を見ると、熊も自分たちの方を見ています。
熊はテイバーの食事をすぐに食べてしまい、その後は木に戻っていきました。

また、別の時にはベンチュラのビーチ近くで、マイケルとテイバーがコヨーテ(狼のような動物)の集団に囲まれているのに気づきました。
マイケルはテイバーとキャットフードの袋を掴むと、木に登り、コヨーテがいなくなるまで避難していました。

ロンはマイケルとテイバーが旅をしている間も、マタ(テイバー)を見つけられず、ひたすら苦悩の中にいました。
ロンの友人は、この時の彼の精神状態を懸念していました。

衝撃の事実。マイケルの決断

こういった経験を通して、マイケルはテイバーのためにも、人生をやり直そうと考えました。
ホームレスとして流れ者のように漂流するのではなく、もう一度生きる場所を作っていこうと考えたのです。

彼はテイバーにもっと良い人生を送らせてあげたいと考えました。
マイケルは紛れもなく、彼を必要とするテイバーのために変わろうとしたのです。

そこで、マイケルとテイバーが旅行を始めてから10カ月後、マイケルはモンタナにある彼の里親の元を訪問しました。
そして、マイケルがテイバーの健康診断を受けるため、彼女を獣医に連れて行くと、なんとテイバーにはマイクロチップがあることが判明したのです。

正に衝撃です。
これまで完全に野良猫だと考えいた猫が、誰かの猫だったのです。
マイケルにとっては、酷く辛い決断でした。
ですが、彼女と離れることになるのが分かったとしても、マイケルは元の飼い主に連絡を取るという正しい決断を下したのです。

獣医から電話を受けたロンは、その知らせを聞き、驚き泣きました。
「マタがモンタナにいるなんて信じられないよ!これは僕が今まで聞いた中で最も狂ったことだ!」とロンは言いました。

マイケルとテイバーの別れ、ロンとマタの再会

▲左:クレト、右:マタ(テイバー)

2013年6月、マイケルはマタをポートランドの彼女の家に連れ戻しました。
二人が近づくのを見ると、ロンは家を飛び出しました。

この時のことを、本の著者コリンズは次のように書いています。
「マイケルが自己紹介さえする前に、ロンはテイバー(マタ)の肩に手を持っていき、自身の腕の中に持っていきました。」

別れの時、マイケルはテイバーに「あなたを愛している」と叫びました。

しかし、ロンがマタを中に入れても、弟猫のクレトを認識せず、ロンは初めぎこちない気持ちになりました。
マイケルが彼女の元から去ったことで、マタ(テイバー)も酷く悲しんでいたのです。

マタのとても悲しそうな表情を見たロンは、昔マタがビートルズの音楽が好きだったことを思い出します。
ロンはビートルズの「and I love her」という曲を弾きます。
その曲が彼女の記憶を揺さぶり、マタはそこで彼女の家であることに思い出し始めます。

しばらくするとマタは、ベッドに飛び乗りました。
間もなく、彼女と弟猫のクレトは互いに嗅ぎ合い鼻に触れました。
そして、マタはロンを見て、突然自分が家にいることに気付いたようです。

テイバーと共に暮らした日々について、マイケルは次のように語ります。
「テイバーは暗闇の世界における虹のようだった。」と。

 

まとめ

改めてもう一度書いておくと、正に「事実は小説より奇なり」ですね。
正直、全く事実を変えずに映画化しても、観る人の心を打ちそうです。

そして、猫が戻ってきたロンにとっては、とても良かったのですが、マイケルのことを思うと不憫でなりません。
とても温かく、そして、とても悲しいストーリーです。
今後のマイケルの人生がより良きものになると良いですね。

参考元:metroNewYorkPostbrittcollinswideopenpets
画像出典:metro

この記事を書いた人

島崎 塁(ミツバ)
ペットショップ、ペットホテル、猫カフェで店員をしていました。仕事とプライベートでの飼育経験から得た猫に関する知識を、余すところなく公開していきます。

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