「ボブという名の猫」という映画はご存知ですか?
ホームレス×薬物中毒というどん底にいる青年が、ある日出会った猫と共に、人生を取り戻していくという話です。
この映画は実話ベースの話で、観てみたところ、非常に良作だったので紹介することにしました!
今回は映画のあらすじや感想を書いていきます。
目次
「ボブという名の猫-幸せのハイタッチ-」映画のあらすじ
ロンドンでロックミュージシャンになるという夢に破れ、ホームレスになった青年ジェームズ・ボーエン。
路上演奏で手に入る極わずかなお金を手に生活を送っていました。
彼は薬物中毒患者という一面もあり、正に人生どん底と言える状況。
そんな中、ソーシャルワーカーのヴァルの助けもあって、なんとかホームレスから抜け出すことができます。
ただ、暮らす場所を手に入れても、生活が厳しいことは変わりません。
ボーエンが猫(ボブ)と出会ったのはそんなときです。
猫に一時的なご飯を与えるも、自分の暮らしで手一杯のボーエンは彼を外に出します。
しかし、家に帰ってきたボーエンはボブが家の前で待っているのを発見します。
ただ、再び会ったボブは怪我をしていました。
飼い主を探して回りますが、見つかりません。
そんな中、隣人の女性ベティと出会います。
ベティは猫をボブと名付け、獣医に向かうように助言します。
ボーエンはボブを獣医に連れて行くと、薬に22ポンド(日本円で約3,000円)必要だと言われます。
22ポンドはボーエンにとって大金で、彼にとってそれは大きな選択でした。
悩むボーエンですが、ボブのために一肌脱ぐことを決めます。
治療を終え、ボブの去勢手術もしたうえで、ボーエンはボブと共に暮らすことにしました。
ここから先は物語のネタバレガッツリ入ります。
▲実際のボブ&ジェームズ・ボーエン氏。
画像出典:Facebook
さて、生活が困窮しているのには変わりありません。
ボーエンは引き続き路上演奏でお金を稼ぎますが、ある日ボブが付いてきてしまいます。
ただ、演奏中ボブがそばにいたことで、普段よりも人が足を止めてくれます。
驚くことに、その日は普段より遥かに多いお金を稼ぐことができました。
ボブとの生活にも慣れてきて、隣人ベティとも仲良くなっていきます。
そんな中、ホームレスだったころの仲間バズが薬物中毒で倒れているのを発見します。
バズは救急車で運ばれますが、助かりませんでした。
ベティもその場に居合わせ、その後、彼女の兄が薬物依存だったという話を聞きます。
彼女の今住んでいる部屋も、元々兄の住んでいた部屋でした。
ベティは兄に対して、精一杯辞めるように説得していましたが、彼はやめられず、亡くなってしまいました。
そういった過去もあり、その後薬物中毒者には一切かかわらないようにしていると。
大晦日の晩、ボーエンは父に会いに行きます。
家には上がったものの、父の新たな家族とトラブルになり、上手くいきません。
ボブと出会ってから生活が上手くいっていたボーエンですが、家族との仲を再建することはできませんでした。
そして、ここをポイントに様々なトラブルに巻き込まれるようになります。
まず、路上演奏している際に、トラブルが起こり彼も巻き込まれます。
防犯カメラで一部始終が撮られていたため、彼に問題がないことが分かりましたが、トラブルに関与したことから、一時的に路上演奏禁止の措置が取られます。
また、このトラブルにより一時的に保護されていたボーエンは、メタドン(代替薬物)の摂取を1日空けてしまいます。
すぐに薬局にてメタドンを貰うも、ベティがその場におり、彼が真実を隠していたことがばれてしまいます。
ボーエンは必死に弁明するも、彼女は聞く耳を持たず、彼の元から立ち去ってしまいます。
辛い状況ですが、収入を得ないとボーエンもボブも食べていけません。
そこで始めたのが、「ビッグイシュー」という路上生活者支援雑誌の販売員です。
ボーエンは、ボブの助けもあって、すぐに人気の販売員になります。
ただ、ひょんなことからビッグイシュー販売員の規則を破ってしまったボーエンは、ビッグイシューの販売資格を1カ月停止されます。
なんとか乗り越えて、再びビッグイシュー販売員として活動するも、犬とのトラブルでボブがどこかに行ってしまいます。
転落続きの人生やボブのいない不安などから、再度薬物に手を出そうとするも、なんとか踏みとどまります。
そんな中、ふと気づくとボブは彼の元に戻ってきました。
そして、彼は逃げててはダメだと、ついに断薬を決意し、ヴァルにその旨を伝えます。
ヴァルも今の彼なら乗り越えられると考え、そのアイデアに賛成します。
断薬を決意したボーエンは、ベティにその話をすると、彼女は彼のことを手伝ってくれることになります。
そして、断薬。
禁断症状により地獄のような苦しみを味わいますが、ボブとベティの助けもあって、彼はなんとか薬物依存を断ち切ります。
ついに綺麗な身になった彼は、父親にその件を報告しに行きます。
父も彼に対してずっと抱えていた気持ちを語り、ボーエンと父は「親子」という確かな絆を取り戻します。
ベティも自分自身の人生を生きるため、引越しをすることが決まりました。
ただ、それはボーエンとの別れではなく、連絡先などはボーエンに伝えられます。
更にベティは、ボーエンを探して訪ねてきた出版社の書類も彼に渡します。
出版社に連絡を取ったボーエンは、本を書くことを提案されます。
そして、ボブとボーエンの二人のストーリーが書かれます。
本のタイトルは「ボブという名の猫」
出版された本はイギリス・ロンドンを中心に、世界的な大ヒットを記録しました。
映画「ボブという名の猫」感想・レビュー
何点か気になったポイントに沿って、映画の感想を書いていこうと思います。
社会問題をテーマに映画自体がとてもよくできている。
猫映画だからほんのりとしたヒューマンドラマかと思いきや、映画序盤ですぐにその考えが間違っていることに気付きます。
作品を通して問題となるのが、(イギリスの)リアルなホームレス像や薬物中毒からの脱却です。
しかも実話をベースにした作品であるため、その描写もとてもリアルに描かれています。
「ゴミ箱の食べ物を漁る」「ホームレス友達であるバズの死」なども、印象に残るシーンですね。
更に心痛だったのが、ボーエンが意を決して、大みそかの晩に父の家へ行った時のことです。
まだ小さな義理の妹に、ジャンキー(薬物中毒者)と連呼されるシーンなどは、かなり沈みます。
主演のルーク・トレッダウェイの好演もあり、こういったシーンは非常に胸に刺さります。
しかし、こういった悲惨な境遇が隠さず描かれているからこそ、ボブやベティとの何気ないシーンが輝いて見えたり、薬物中毒からの脱却も肩入れして見れるようになるのです。
原作は世界的に大ヒットを収め、その流れから映画ができましたが、映画の評価もとても高いです。
人を魅了する映画と言えますし、高評価が納得の出来となっています。
色合いがカラフルで、音楽も素敵!
映画で素晴らしかったのは「リアルなストーリー」だけではありません。
映画内の演出では「映画の色づかい」と「素敵な音楽」も印象に残りました。
薬物中毒に代表される映画の暗いシーンでは、黒を基調とした色づかいになるのですが、昼のシーンは基本的にとてもカラフルで色づかいがオシャレでした。
特に、ボブが途中から付けるマフラーや、ボーエンが着用する赤いビッグイシュー販売員のベストなど鮮やかな色遣いが楽しい印象を残します。
また、音楽も素敵なものがあります。
ボーエン自身がストリートミュージシャンと言うこともあり、ギターを基調とした演奏シーンは数多くあります。
映画に出てくる演奏シーンは彼のその時の心情や、状況を上手く当てはめた歌詞となっており、アコースティックの音楽もしんみりさせてくれます。
ジャンルこそ全く違いますが、”カラフル×ギター音楽”の組み合わせから、ディズニー映画の「リメンバー・ミー(アマゾン)」を思い出しました。
ボブ(猫)がとにかく可愛い!
猫と暮らすようになると、日常のちょっとした出来事が途端に楽しくなっていきますよね。
正にそんな点を教えてくれるような映画とも言えます。
とにかくボブがとびきり可愛いです!
なんと、映画に出てくるボブはほとんどのシーンで、実際のボブ(猫)が演じてるだそうです。
実話ベースのストーリーとは言え、本物の猫が役を演じるなんて、なかなか聞かない話ですよね!
茶トラ柄に緑の瞳という見た目のボブは、基本人を怖がることがありません。
とてもおとなしい猫なのかと思いきや、ボーエンが外に出ると付いてきてしまうし、薬を飲むシーンの嫌がり方などは、露骨に嫌がります。
こういったシーンは、猫の飼い主さんなら笑いながら観ているのだろうと、想像がはかどります。
個人的には去勢のシーンも入れていたのが、意義深く感じられました。
猫と共に暮らしていくには、去勢・避妊は大切なことですが、無理してまで入れるべきシーンではなかったからです。
ただ、このシーンを入れたこと自体が、ただの”楽しい動物映画”からの脱却を主張しているようにも感じました。
ボーエンとの関係性も良く描かれており、彼らはお互いに出会ったことがラッキーであるかのようです。
ボブはストリートキャットのままでは長生きできなかったでしょうし、ボーエンもボブという責任を持ったことで、どん底の人生から脱却するきっかけを貰いました。
抱っこされてるときの「ゴロゴロ」という喉ならしの音はとてもキュートです!
猫をトラやライオン扱い
映画本題とは全く関係ありませんが、バスに乗ってるボーエンがライオンの像があるのを見て、ボブに対して「お前もライオンみたいだな」と話しかけるシーンがありました。
猫をトラやライオンに例えるのは、猫の飼い主あるあるの一つですね。
私も友達とよくわたげのことを「小虎(一時期噛み癖がひどく、襲ってきていたため)」と表現していたので、気持ちよく分かるなと感じました。
「猫は9つの命を持つ」
日本ではあまり浸透していないですが、「猫は9つの命を持つ」ということわざがあります。
劇中でも、ボーエンがあったばかりの頃のボブに対して、「猫は9つの命を持ってるんだろ」と話しかけるシーンがあります。
日本ではあまり知られていないのですが、欧米では比較的浸透していることわざなのかなと考えたりしました。
商売のコツが描かれている?
恐らく映画製作者はあまり意識していないでしょうが、私は「ボブという名の猫」に、商売のコツのようなものも書いてある気がしました。
ボーエンは自分一人で路上演奏をしていたころは、食べていくのがやっと程度の収入しかありませんでした。
ただ、ボブと出会い、彼を連れて路上で歌うと、それまで見向き去れなかったのが嘘のように、収入が増えました。
更に、路上演奏が一時的に禁止され、ビッグイシュー販売員を始めた際も、ボブと一緒にいることで生まれる人気は変わりませんでした。
明らかに彼は他のストリートミュージシャン、ビッグイシュー販売員とは違う個性を持っていました。
そう、ボブです。
ストリートミュージシャンもビッグイシュー販売員でも最も大切なのは、通りがかる人を惹きつけることです。
どれだけ人通りの多い場所で活動をしても、透明人間がやっていたのでは、収益は上がりません。
だからこそ、人の目を惹きつけることのできるボブと言う存在は、ボーエンの収益を助ける後押しになったのです。
ボブが通行人の心の懐にさえ入ってしまえば、リターンも増えてきます。
実際「ボブという名の猫」は実話ですし、このポイントも原作と相違ありません。
ビッグイシューHPでは、現実のジェームズ・ボーエン氏のこんな言葉が載っています。
「ボブが一緒にいると人が見てくれる。それまでの僕は透明人間(インビジブル)だった」
出典:ビッグイシューHP
セカンドチャンスは自分の手で掴んで放すな
この映画では、「セカンドチャンス」という一つのテーマがあります。
現在どん底にいる人間でも、這い上がるための「セカンドチャンス」があるということですね。
ボーエンはボブと出会った時、人生を半ば諦めたようなかなり絶望的な状況でした。
そんな折にボブが彼の前に現れ、紆余曲折を経ながら再生への道を歩くことができました。
間違いなく、ボーエンにとっては、ボブこそが舞い込んだ「セカンドチャンス」だったのでしょう。
ただ、そんなボーエンにとっても、その幸運を逃すかどうかは紙一重でした。
ボブを獣医に連れて行った際に、彼の薬は22ポンドかかるものでした。
当時のボーエンにとって、22ポンドは大金で、言ってしまえば、たかが知らない野良猫のために、22ポンドをはたいて薬を購入したのです。
ここで彼が「俺の猫じゃないから」とボブを手放していれば、またその後の話は変わったでしょう。
ただ、彼はそうせず、自分にとってのセカンドチャンスをしっかりとつかんだのです。
その後、ボーエンはボブと生活を共にすることを決意し、責任感を感じ、幸運にも恵まれ人生を取り戻していきます。
セカンドチャンスは、誰の前にも降りてくるものかもしれません。
しかし、それを掴むかどうか、さらに言えば、掴んで放さずいられるかどうかは、自分次第なのです。
たまたま最近読んだ「だから、あなたも生き抜いて(アマゾン)」と言う別の本にも違いことが書いてありました。
救いの綱というのは降りてくるものなのかもしれません。
ただ、それを掴んでものにするかどうかは、自分にかかっているのです。
実話だから気になる!現在のボーエン氏とボブは?
「ボブという名の猫」は元々ノンフィクション小説として出版され、イギリスでは世界30か国語で訳される大ヒットとなりました。
ちなみに、映画は非常に原作に忠実で、基本的な部分は映画と同じと言って差しつかえないでしょう。
気になる現在のボーエン氏とリアルボブですが、今でも仲良く一緒に暮らしているようです。
ボーエン氏は現在ボブとの話を中心に作家活動を行ったり、イベントなどで彼自身の経験を語っているそうです。
また、ホームレスの支援や動物のための慈善活動にも従事しているんだとか。
sippoでは、日本来日時の彼とのインタビューがまとめられています。
興味がある方は、是非読んでみてください。
また、ジェームズ・ボーエン氏とボブの近況を知りたい場合は、フェイスブックやツイッターページがあるので、チェックしてみてください。
ボーエン氏とボブは、イギリス・ロンドンでは知らぬ人はいないほど有名なコンビなんだとか。
まとめ
ボーエン氏とボブの心温まるストーリーはいかがだったでしょうか?
本当によくできた映画で、中だるみしてしまうことがありませんでした!
この映画はリアルで悲惨なシーンも数多いですが、それ以上に心温まるストーリーとなっています。
ちょっと興味がわいたという方は是非見てみてください!
「ボブという名の猫」と同様に、一人のホームレス男性と一匹の猫の心温まる実話がもう一つあります。
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