「猫伝染性腹膜炎(FIP)」という病名を聞いたことはあるでしょうか?
1度発症してしまうと、致死率がほぼ100%のとても恐ろしい病気です。
今回はそんな猫伝染性腹膜炎の原因や症状、予防方法などを紹介していきます。
目次
「猫伝染性腹膜炎」その症状とは
猫伝染性腹膜炎(略称:FIP)とは猫伝染性腹膜炎ウイルスが原因の病気です。
猫伝染性腹膜炎の恐ろしい点は何といっても、一度発症してしまうと致死率がほぼ100%ということです。
子猫(生後3週間~3歳)や老猫など、免疫力がそれほど高くない猫に多く発症する病気です。
猫伝染性腹膜炎を発症する確率は、猫全体の1~5%程度と言われています。
そんな猫伝染性腹膜炎は、大きく以下の2つの種類で分けることができます。
それぞれどんな違いがあるのかを詳しく解説していきます。
- ウエットタイプ
- ドライタイプ
※とはいえ、中にはどちらの症状も現れてしまう子などもいるようです。
ウエットタイプの症状
ウエットタイプの猫伝染性腹膜炎は文字通り、水(体液)が関係してきます。
主にお腹や胸に体液が溜まってきてしまうのがウエットタイプの特徴です。
この影響で傍目からもわかるように、お腹が不自然に膨らんでしまうこともあります。
また胸に水が溜まってしまうこともあるため、呼吸困難に陥り亡くなってしまう子も多いようです。
ウエットタイプで見られる症状は以下になります。
- 食欲不振※
- 発熱※
- 嘔吐※
- 下痢※
- 体重減少※
- ぐったりして元気がない※
- くしゃみ
- 鼻水
- 腹部への体液の貯留
- 胸部への体液の貯留
- 呼吸困難
※ドライタイプでも見られる共通の症状になります。
ドライタイプと比べると、ウエットタイプの猫伝染性腹膜炎を発症する子の方が多いようです。
ドライタイプの症状
ドライタイプの猫伝染性腹膜炎は、ウエットタイプのように傍目から分かりやすい症状が現れないのが特徴になります。
そのためドライタイプのFIPはキャリアを積んだ獣医でも、確実な診断をすることは難しいようです。
ドライタイプの症状としては以下が挙げられます。
- 食欲不振※
- 発熱※
- 嘔吐※
- 下痢※
- 体重減少※
- ぐったりして元気がない※
- 子猫の成長不良
- 貧血
- 黄疸
- 目の炎症(ブドウ膜炎など)
- 失明
- 神経症状
- 肉芽腫
※ドライタイプでも見られる共通の症状になります。
中には肉芽腫が腎臓や肝臓などにできてしまうこともあります。
猫伝染性腹膜炎の原因
猫伝染性腹膜炎ウイルスが原因です。
ただ猫伝染性腹膜炎ウイルスは、元々は猫コロナウイルスという多くの猫が持っている弱毒性のウイルスです。
この猫コロナウイルスが突然変異することで、猫伝染性腹膜炎ウイルスになります。
猫コロナウイルスが突然変異する条件などは分かっていませんが、ストレスが強い相関関係を持っているのは分かっています。
猫コロナウイルスを体内に保持している猫のおよそ10%程度が、猫伝染性腹膜炎を発病してしまいます。
猫コロナウイルスは感染猫の糞尿や唾液、鼻水などに含まれます。
猫伝染性腹膜炎の予防対策
猫伝染性腹膜炎にかからないためには、どのような予防対策があるのでしょうか?
残念なことに現在はFIPワクチンなどの決定的な予防対策はありません。
ただ猫伝染性腹膜炎の発症には、ストレスが強い相関関係を持っていることが分かっています。
そのため予防対策として、猫にストレスをかけず免疫力を高めることが大切です。
特にストレスは以下の要因によってかかりやすいと言われています。
- 多頭飼い
- 引越し
- ペットホテルの利用
- 動物病院への通院
猫はデリケートな動物であるため、ちょっとしたことでストレスを感じてしまうことがあります。
特に多頭飼いを開始した翌月に、先住猫がFIPを発症してしまうケースは多いようです。
多頭飼いをする際は、段階を踏んで仲良くやれるようにしましょう。
鼻腔内用のFIPワクチンが一応はあるようですが、現在利用されているのはアメリカとヨーロッパのみで日本では使われていません。
ただ米欧で使われているそのワクチンも、まだ正式には推奨されていないようです。
猫伝染性腹膜炎の検査とその費用
FIP自体の検査はありません。
その代わり猫伝染性腹膜炎ウイルスに変化しうる、猫コロナウイルスに関しては検査ができます。
ただ猫コロナウイルス自体の検査をしても、明確に猫伝染性腹膜炎ウイルスになるかどうかはわかりません。
もちろん最も良いのは猫コロナウイルス自体に感染しないことですが、多くの猫は猫コロナウイルスを体内に保持しているため中々難しいのが現状です。
また猫コロナウイルスの抗体検査の費用は病院によって違いますが、おおよそ8000円~13000円程度のようです。
猫伝染性腹膜炎発症後の猫の余命
FIPが発症すると、基本的に余命はとても短いです。
中には完治して寿命を全うしたというケースもありますが、それはごくわずかです。
猫感染症研究会の調べによれば、判明後の生存期間中央値は9日と発表されています。(引用:猫感染症研究会FIPデータ)
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猫伝染性腹膜炎の治療方法
残念ですが、現在はまだ明確な治療方法などはありません。
そのためFIPの治療は完治を目指すというより、症状を緩和させてあげる治療法になります。
具体的にはインターフェロンやステロイド剤の投与などにより、免疫力の強化や併発した病気に対する治療を行うことになります。
まとめ
猫伝染性腹膜炎は一度発症してしまうと、致死率ほぼ100%という恐ろしい病気です。
現在ではまだ有効な治療法などは発見されていませんが、少しずつワクチンの開発なども進んでいます。
将来的なワクチン・治療法開発に期待したいところです。