いつも食欲旺盛な猫ちゃんが、ある日突然ご飯を食べなくなった。いくら促しても食べようとしない。いわゆる「食欲不振」というやつですね。
こんな事があると飼い主としては心配でいてもたってもいられない気持ちになってしまいますよね。
このページでは、猫の食欲不振について「獣医師がどの様な事を考えて診察していくのか?」、「ご自宅ではどのような対策が出来るのか?」を獣医師の渡邉先生監修のもとご紹介しています。
猫が食欲不振で悩んでいるという方は、このページで紹介している「5つの食欲不振対策」を試してみてはいかがでしょうか。
個人的な感覚ですが、この対策を使えば70%近くは食欲不振を治すことができると実感しています。
目次
はじめに:食欲不振とは?
そもそも、どのくらいの時間ご飯を食べないと「食欲不振」と考えられるのでしょうか。
生後7カ月ほどの子猫だったときに、ちょいちょいフードを残すということがありました。
ちょっと不安になることもありますが、大抵次の食事の時間には今まで通り食べてくれるようになります。
このように1回ご飯を食べないからと言って、食欲不振と言うのは早いのですが、では実際どの位の間ご飯を食べないと食欲不振と言えるのでしょうか。
結論から言うと『何時間食べないから食欲不振』と言う正確な指標は存在しません。
ただ、『これだけ経っても食べないのは要注意』という目安はあります。
以下のリストを参考にしてください。
- 生後1~2カ月:8時間
- 生後2~4か月:12時間
- 生後6ヶ月以上:24〜48時間
これだけ食べなければ、医学的な食欲不振に当てはまると言うような指標ではありませんが、
一つの目安として、『これ以上食事の間隔が空いてしまうようなら注意しておく!』と考えて行動するのが良いでしょう。
特に子猫は身体の成長のためにかなりのエネルギーを必要とします。また、成猫の様に体内に脂肪などのエネルギー貯蔵庫も形成されていないため、エネルギーのほとんどを食事に頼らざるを得ません。
そのため子猫は成猫に比べ絶食に耐えられる時間が短く、簡単に低血糖を起こしてしまいます。
子猫のご飯のあげ方や低血糖に関して詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。
一方、ある程度成長した大人の猫なら、1日2日ご飯を食べなくても低血糖を起こしたり、直ちにどうこうなったりすることはほぼありません。
しかし、4〜5日以上絶食状態が続くと肝リピドーシスと言う肝障害を引き起こしてしまう可能性があります。
特に太っている猫ちゃんが数日にわたり絶食状態が続くと肝リピドーシスを引き起こし易く、注意が必要です。
そのため、ご飯を食べない状態が続いた場合は、あまり長いこと様子を見ないで病院への受診をお勧めします。
猫の食欲不振の原因
猫の食欲不振の原因はなんでしょう?と質問されても「これです!!」と簡潔に答えられる獣医さんはまずいないでしょう。
動物病院での診療において、最も獣医師を悩ませる症状の1つが食欲不振です。
悩まされる理由はズバリ『食欲不振を起こす原因が多すぎる。』ことにあります。
一口に食欲不振と言っても、病的なものや生理的なもの、心理的なものまで様々です。
ですので、ここでは原因について細かく紐解くことはせずに、獣医師がどの様に食欲不振の子の診療にあたるのか、頭の中を少し覗いてみる形で解説いたします。
まず、獣医師が使う専門書などには食欲不振の原因として以下のような病気があります。
食欲不振の分類と原因
原発的な食欲不振 | 続発性の食欲不振 | 偽りの食欲不振 |
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参照:動物医学 鑑別診断と治療第3版 より抜粋
ここでは食欲不振の原因になるものはかなり沢山ある!と言うことがなんとなく分かれば大丈夫です。
これだけ沢山の食欲不振の原因の中から、その子の食欲不振がどれにあたるのかを特定するとなると非常に大変です。
実際に、動物病院でこれらを全て検査して確認していくと言うことはありません。
全てを確認するとなっては、とてつもない時間と検査費用がかかってしまいます。
そこで、何はともあれ、病院ではその食欲不振が病的なものなのか、生理的・心理的なものなのかを判断していきます。
特に猫の場合、心理的な食欲不振はよく見られます。
「いつもと違うご飯に変わった」、「工事などで知らない人の出入りが増えた」、「引っ越しをした」などの環境変化でご飯を食べなくなることはよく見られます。
この様な心理的・精神的な食欲不振と本当に何か病気があって起こる食欲不振との区別は、見かけだけでは判断がつきません。
そのため、病院では以下の項目を確認して、病気として治療が必要なものがあるのかどうかを見ていくことになります。
- 直ちに治療が必要な緊急的な状態ではないか?
- 食欲不振以外の症状(原因を特定するための手がかり)がないか?
注意が必要な食欲不振
「引っ越しをした」、「ご飯を変えた」、「人の出入りが増えた」など、環境の変化やストレスの原因が明らかであればご自身でもわかりやすいですが、はっきりとした理由がわからないこともあると思います。
では、ご自身の猫が食欲不振になった時、注意しないといけない食欲不振や病院に連れていくタイミングはどの様な時なのでしょうか?
まず一つの指標としては『絶食時間』です。
はじめにお話しした様に、あまりに長い絶食は、肝障害を引き起こしたり、低血糖を引き起こしたりと二次的な問題に繋がりかねません。
理由がなんであれ、ご飯を食べない時間が長時間に及ぶときはなるべく早く対応しましょう。
以下に示す絶食時間は、病院への受診を考える目安と考えてください。
- 生後1~2カ月:8時間
- 生後2~4か月:12時間
- 生後6ヶ月以上:24〜48時間
2つ目の指標としては『食欲不振以外の症状がある』です。
「下痢や嘔吐」、「ふらつきやヨダレ」、「呼吸が早い」など食欲不振以外に何か気になる症状が併発している場合は心理的・生理的なものではなく何か病気が隠れている場合があります。
この様な場合も、様子を見ずに病院への受診をお勧めします。
簡単!5つの食欲不振対策!
食欲不振の原因の次は、簡単にできる対策についてです。
絶食時間があまり長くなく、他に症状が何もない場合やストレスなどの原因が明らかな場合は以下の様な方法を試してみるのもいいでしょう。
これまでの経験を基にした私個人の感覚なのですが、ここで紹介する方法を使えば、10匹中7匹は食欲不振が治ると思います。
どの方法もかなり効果が見込めて、簡単にできるものなので、是非試してみてください!
1.ドライフードをお湯でふやかす
これは手軽にできる方法でありながら、かなり効果が見込めます。
ミツバの働いていた猫カフェでは、猫がフードを食べなくなった場合にまずこの方法を行います。
肌感覚としては、5匹中2、3匹はドライフードをふやかすことで食べるようになります。
ドライフードをお湯でふやかすと、匂いが強く出るため、かなり食べやすくなります。詳しい作り方は以下になります。
いつもあげているドライフードに、ドライフードより少し少ないくらいのお湯(70℃くらい)をかけましょう。
ラップで5分ほど蒸らすと、ドライフードはふやけ、かなり匂いが出るため猫の食欲をそそります。
この方法は主に、「鼻が詰まっている猫」や「高齢化による食欲不振」などにかなり効果的な方法です。
場合によっては、「ご飯の味に飽きた猫」や「体調不良による食欲不振」にも効果的です。
2.フードを別のものにする
「フードの味に飽きた、フードの味が好きじゃない」ということが原因でご飯を食べなくなってしまうこともあります。
この場合に良く効く対策が、フードを変更することです。
味に飽きただけの場合は、一時的に食欲が落ちるだけで、大抵は少しするとまた普通に食べるようになります。
フードの味自体が好きでない場合は、何か違うフードに変えた方が良いかもしれません。
3.ウエットフードを与える
ウエットフードはドライフードと比べてかなり香りが強いです。
そのため鼻づまりによってご飯を食べなかったり、理由が分からないけどごはんを食べない場合などにも効果的な対策になります。
※ウエットフードをご飯(主食)として与える場合は、必ず「総合栄養食」という記載のあるものにしましょう。
4.鶏のササミを湯がいて与える
鶏のササミは猫にとって、味はもちろんのこと、かなり栄養価的に良い食品です。
そのため食欲不振のときなどは、一時的に鶏のササミを買ってきて、それを湯がいて食べさすのも一つの手です。
ただあまり長い間食べさせると、グルメ猫になって通常のご飯を食べたりしなくなることがあるので、基本はおやつとして与えるくらいが良いでしょう。
5.ドライフードにチャオチュールなどをかける
チャオ (CIAO) ちゅ~る まぐろ 海鮮ミックス味 20本
チャオチュールはご存知ですか?
ペースト状の猫用おやつなのですが、ドライフードにこれをかけるのも一つの食欲不振対策です。
ご飯を変えたり、ドライフードをふやかすのと似ていますが、より手間がかからず簡単ですね。
この方法は猫がフードの味に飽きている場合の、一時的な対策としてかなり効果的です。
おやつは食べるけど、ごはんは食べないという場合は、この方法を用いれば80%ほどはご飯を食べるようになるでしょう。
ただチャオチュールだけなめて、フードには口をつけない猫もいるので、この対策をする場合は、必ずチャオチュールとドライフードをよく混ぜましょう。
チャオチュール以上に効果が強いのは、「カロリーエース」というミルクの匂いがする液体の総合栄養食です。これをご飯にかけると、本当に効果抜群です!
老猫の場合は、ふやかしたご飯の上にカロリーエースをかけても良しです!
どうしても食べてくれない時は
どうしても食べてくれない場合は、単なる食欲不振ではない可能性があります。
病的な原因などによって、ご飯を食べていない可能性もあるので、そんな時はすぐに病院に行くことを考えた方が良いでしょう。
※深刻な食欲不振の場合は、点滴や注射による栄養の投与を行われる場合もあります。
まとめ
食欲不振は猫を飼っている上で、よく起こるトラブルのひとつです。
食欲不振の原因は非常に多く、病的なものから一時的なものまで広く存在します。
個人的な感覚では7割ぐらいの子はここで紹介している5つの対策で食欲不振も改善されると思います。簡単にできるものばかりなので、是非試してみてください。
そんな時は病院で治療などをする必要があるので、病院に行って診てもらうことをおすすめいたします。
参考文献
- 小動物医学 鑑別診断と治療 第3版
- 伴侶動物の臨床病理学
- Small Animal Internal Medicine 第4版
(それどころか、買ったばかりのソファーに粗相をしてしまいました。。。苦笑)