一度感染してしまうと決定的な治療法がない病気、それが猫エイズです。
今回はそんな猫エイズの症状や感染源、治療法などについて紹介していきます。
現在FIVキャリア持ちの猫を飼っている方はもちろん、猫エイズについてよく知らない方も是非読んでみてください。
目次
猫エイズとは
猫エイズとは正式名称を「猫後天性免疫不全症候群」と言い、猫免疫不全ウイルス(FIV)によって引き起こされる様々な症状のことを言います。
猫エイズの恐ろしい点は免疫機能が弱まってしまうために、発症後は様々な病気にかかってしまうことです。
人間にもHIVによってエイズが発症しますが、それの猫バージョンが猫エイズなのです。
※とはいえ病気の重さで言えば、HIVの方が深刻です。
そんな猫エイズを理解するには、猫エイズの進行具合(ステージ)が分かれているということを知るのが大切です。
猫エイズは大きく以下の3つのステージに分類できます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
- ステージ1(急性期)
- ステージ2(無症状キャリア期)
- ステージ3(エイズ発症期)
ステージ1(急性期)
猫エイズの進行具合の初めに当たるのが「急性期」です。
猫エイズに感染すると、FIV(猫エイズを引き起こすウイルス)は体全体に広がっていきます。
FIVに感染してから1カ月ほど経つと、発熱や白血球減少、貧血、倦怠感やリンパ節の腫れなどの諸症状が数週~数か月間現れることがあります。
ただこういった症状が現れるのは、FIVに感染したすべての猫ではありません。
そのため猫エイズにかかったことが分からないままになってしまうケースも多いのです。
ステージ2(無症状キャリア期)【潜伏期間】
ステージ1が過ぎると全く健康に問題のない「無症状キャリア期」に移ります。
いわゆる表には症状が出ないものの、ウイルス自体は猫の体内のリンパ球を着々と攻撃している「潜伏期間」と言えます。
この時期は他の健康な猫と同じように全く症状が現れません。
通常この潜伏期間は2~4年ほど、また猫によっては10年ほど続くこともあります。
この時期に入っているFIV持ちの猫のことを、「FIVキャリア」とも呼びます。
ステージ3(エイズ発症期)
ステージ1・2を経て、突如としてウイルスが猛威を振るう「エイズ発症期」へと移ります。
ステージ3が発症するのは、5~12歳ほどになってからが多いようです。
猫エイズが発症すると免疫機能が非常に弱まっているため、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。
主に以下の症状が現れます。
軽い病気から重い病気まで様々ですが、特に口内炎や歯肉炎などの歯周関係の病気は多く見られるようです。
猫エイズ感染の原因
猫エイズ感染の原因は大きく2つが挙げられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
- 接触感染
- 垂直感染(母から子供への感染)
接触感染
猫エイズウイルスは猫の唾液や血液などの体液に存在します。
猫エイズの感染力はそれほど強くないため空気感染などではうつらず、主に咬傷や交尾などによってうつります。
具体的な感染源は、キャリア持ちの野良猫などとの喧嘩、キャリア持ちの猫との交尾、またお互いになめ合うことでもうつることがあります。
この中でも最も気を付けるべき感染源は喧嘩によるものです。
猫エイズのキャリア持ちは雄(オス)猫の方が圧倒的に多く、雌(メス)猫の2倍以上と報告されています。
雄猫の方が感染個体が多いのは、猫エイズの主な感染経路が喧嘩などの咬傷に唾液が入り込むことによってうつることが多いからです。
垂直感染
もう一つの感染源は垂直感染、簡単に言ってしまえばFIV持ちのお母さんのお腹の中にいる子供にうつってしまう感染ルートですね。
猫エイズ持ちの母猫から生まれた子猫は、垂直感染(母から子供にうつること)の可能性もありますが、検査で陽性と出ても猫エイズへの抗体だけを受け継いでいる場合もあります。
そのためこういった子猫が検査で陽性と出た場合は、本当にFIVに感染しているかどうかを調べるために、1歳前後になったら再び検査をする必要があります。
猫エイズの予防方法
猫エイズにかかるのを予防するには以下の方法が挙げられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
- 完全室内飼い
- 去勢・避妊手術
完全室内飼い
猫エイズに関して最も有効な予防方法は、「感染猫との接触を避けること」に限られます。
具体的には完全室内飼いが推奨されます。
日本では野良猫の10%ほどがFIVに感染しています。
そのため飼い猫が外に出かけ、野良猫と喧嘩をしてしまうことでFIVをもらって帰ってきてしまう可能性があるのです。
というよりキャリア持ちの猫との交尾以外では、FIVの主な感染源はキャリア持ちの猫との喧嘩になるため、外に出なければ感染する可能性は激減します。
実際、「放し飼いの猫」と「完全室内飼いの猫」との猫エイズの感染の割合は19:1と、圧倒的に放し飼いの猫の方が高いのです。(引用:「猫のエイズ」集英社新書 石田 卓夫著)
猫のエイズ
こういったことを考えるとやはり、完全室内飼いを徹底することで猫エイズの感染は大部分において防げることがわかります。
去勢・避妊手術
去勢・避妊手術は猫エイズの直接の予防にはなりませんが、間接的な予防策になります。
去勢・避妊手術を終えることで、異性を求めて交尾をすることがなくなります。
交尾も感染源の1つであるため、感染リスクが減るという意味では去勢・避妊手術も予防の1つになるというわけです。
猫エイズの検査と費用について
猫エイズの検査は動物病院で行うことができます。
検査は猫エイズと、猫白血病を同時に調べる採血検査になります。
簡易検査では10分ほどで結果が出るようなので、手軽に調べることができます。
費用は病院によって設定金額が異なるため、一概には言えませんが採血量込みで4000円~8000円ほどの費用がかかることが多いようです。
野良猫を保護して飼う場合なども、こういった検査は必要になります。
ただ猫エイズはFIVに感染してから2カ月ほど経ってからでないと、検査結果に反応しません。
そのため野良猫を新しく引取った場合、猫エイズの検査は室内飼いを始めてから2カ月以上経ってから行うのが理想的でしょう。
猫エイズは人・犬にうつるの?
猫エイズは人にはうつりません。
そのためもし飼い猫がウイルスに感染してしまっても、基本的にはこれまでと同じように飼うことができます。
ただ猫エイズ発症後に併発することのある病気によっては、人にも感染してしまうものもあるので注意が必要です。
また犬やうさぎにも同様にうつりません。
FIVに感染の危険があるのはネコ科の動物のみです。
そのためライオンやヒョウなどのネコ科動物にはうつります。
猫エイズキャリア持ちの猫の多頭飼いについて
キャリア持ちの子と、キャリアでない子の多頭飼いについては人それぞれ意見が異なります。
私の意見としては、猫の多頭飼いをしていて1匹がFIVキャリア持ちの場合は、基本的には部屋を分けての飼育をおすすめします。
喧嘩などを全くしない場合でも、お互いの体をなめ合ったりすることで唾液の交換が行われ、FIVがうつってしまう可能性もあるためです。
ただ本当に仲が良い猫同士などの場合は、隔離して引き離してしまっていいものか悩みますよね。
「例え猫エイズ感染の可能性があっても、一緒に生活をさせてあげる方が幸せなのではないか。」と感じるケースもあると思います。
そういったケースの場合は例え感染の危険性があっても、部屋を分けず同居させるのも一つの手だと思います。
ただそれを最終的に判断してあげるのは飼い主さん自身です。
どちらにしても納得のいくようにしっかり考え、判断してあげましょう。
また元々猫を飼っている家で、新しく野良猫を拾ってきた場合は検査によって感染症を持っていないことが分かるまでは必ず部屋を分けるようにしましょう。
FIV感染後の猫の余命
petplace.comでは獣医への定期的な訪問、適切なケアと疾病管理をすることでFIV感染が判明してからでも10年ほど生きるケースもあると報告しています。(中には発病しないまま、寿命を全うする子もいるようです。)
ただこれは猫エイズのステージ1,2の状態に限ります。
ステージ3(猫エイズ発症期)になっており、1つ以上の深刻な病気を抱えている場合、もしくは永続的な発熱や体重減少が見られる際は余命も非常に短いと言えるでしょう。
猫エイズの治療方法(キャリア猫との過ごし方)
残念ですが、現在は猫エイズ自体を直接倒すような治療方法・特効薬はありません。
あくまで発症を遅らせたりするような治療方法を取ることになります。
具体的には以下の治療方法が挙げられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
- インターフェロン治療
- ストレス緩和
- 栄養価の高い食生活
インターフェロン治療とその費用
インターフェロンとは猫の免疫力を増強するタンパク質のことです。
元々猫の体内でも作られるのですが、FIVが体内で繁殖すると元々体で生産している分だけでは対処できなくなるため、外からも投与することで補助するのです。
ただインターフェロン投与によって、期待できるのは猫エイズの発症を遅らせることだけです。
インターフェロン投与の費用は一回3000円~5000円ほどのようです。
どの程度の間隔で投与するかは獣医さんの意見と、飼い主さんの判断次第でしょう。
ストレス緩和
人間と同じく猫もストレスを感じることで、免疫力が低下してしまいます。
キャリア状態のまま猫エイズの発症を遅らせるには、できるだけ健康で良いコンディションを保つことが大切です。
そのため猫のストレスを緩和をすることも、猫エイズ発症を遅らせる一つの方法になります。
栄養価の高い食生活
しっかりとした食生活を摂ることで、病気などにもかかりにくくなります。
ストレス緩和と同様に食生活の質の高いものにすることで、健康な体を保てるため猫エイズの発症を遅らせることができます。
FIVを持っていることが判明した場合は、これまで放し飼いだった場合でも完全室内飼いにしましょう。
他の猫に移してしまうのを避けるためです。
まとめ
猫エイズは決定的な治療方法が今のところない恐ろしい病気です。
ただ室内飼いと去勢・避妊手術をすることによって、大部分は感染を防げます。
またキャリア持ちの状態であっても、免疫力を高められるように日々の生活を過ごしやすいものにしてあげましょう。
結局ですね野良猫が多いということも「バースコントロール」が出来るならその数は減ってゆきます。不妊、去勢手術費用の助成。あるいは地域で多頭飼いしている人などはその費用は大変です。つまり飼いきれずに野良化してしまう猫も多いと思います。さらに病気持ちの猫を飼えなくなった人が捨てる行為がある為にその地方の猫が危険になる。「地域猫として一定エリアをバースコントロールの対象とする」ということを行政に是非やってもらいたのです。
その為に動物愛護に「本当に関心のある議員」に働きかけたいと思います。個人の努力では無理な問題なのです。どんな解説もその点だけを除外してます。画龍点睛を書くということです。
neconococoro様
コメントありがとうございます。
バースコントロールという視点に立って野良猫問題を深く考えてはいなかったため、興味深いご意見でした。
確かに不妊・去勢手術の助成金が区や市から今以上にしっかり出るようになれば、バースコントロールも容易になるでしょう。
また飼いきれずに野良化してしまうという問題を防ぐためには、マイクロチップの装着義務化なども一つの打開策かなと個人的には思っています。
早急にこういった問題を解決していくのは難しいかもしれませんが、徐々に解決に向かえば良いですね。